スペクトル項の求め方

序文

遷移金属のスペクトル項の求め方がようやく(何となく)わかったので書き記す。
これが正しいやり方かどうかは知らんがまあ求められる。

d軌道に電子2つの( d ^ 2)の場合

先ず電子のスピン状態を  \alpha , tex: \betaとする。
d電子2つの場合以下の場合がある。
(例えば d _ \alpha ^ 2 , d _ \beta ^ 0は、d軌道にある"スピン状態が \alpha , \betaの電子"がそれぞれ2, 0個あるという意味)

 d _ \alpha ^ 2 , d _ \beta ^ 0  d _ \alpha ^ 1 , d _ \beta ^ 1  d _ \alpha ^ 0 , d _ \beta ^ 2

ここでそれぞれの場合におけるスペクトル項を求める。

 d _ \alpha ^ 2 ,  d _ \beta ^ 0の場合

この場合はパウリの排他原理により、同じ軌道角運動量を持つ電子は存在できない。
(両方ともスピン量子数が同じで、2つの電子がd軌道に入っていて、かつ同じ"磁気量子数に対応する軌道"に入ることはできないということ)
また全スピン量子数 Sは1になる。

電子の軌道角運動量 lが+1 .. -1の範囲内において、2つの電子の軌道角運動量の組み合わせは以下の3パターンが挙げられる。

+1, 0
+1, -1
 0, -1

これはスペクトル項 Pに相当する。
パターンの数は、要は順番を区別しない"組み合わせ"なので _3C_2で求められる。

次に電子の軌道角運動量が+2 .. -2の範囲内において、2つの電子の軌道角運動量の組み合わせは以下の10パターンが挙げられる。

+2, +1
+2, 0
+2, -1
+2, -2
+1, 0
+1, -1
+1, -2
 0, -1
 0, -2
-1, -2

これもパターンの数は _5C_2で求められる。
このうち、[+1, 0-], [+1, -1], [0, -1]の組み合わせはスペクトル項 Pと同じなので取り除く。
残りの7パターンがスペクトル項 Fに相当する。

 d _ \alpha ^ 0 ,  d _ \beta ^ 2の場合

これは d _ \alpha ^ 2 ,  d _ \beta ^ 0の場合と求め方が同じなので割愛する。

 d _ \alpha ^ 1 ,  d _ \beta ^ 1の場合

2つの電子スピン量子数が異なるため、それぞれ同じ軌道角運動量を持つことができる。
全スピン量子数 Sは0になる。

2つの電子の軌道角運動量の組み合わせは5*5=25で結構いっぱいあるのでパターン一覧は書かない。
全軌道角運動量は4 .. 0 まであり、スペクトル項は大きい順に G, F, P, D, Sとなる。

全ての項をまとめる

 d _ \alpha ^ 2 ,  d _ \beta ^ 0の場合、及び d _ \alpha ^ 0 ,  d _ \beta ^ 2の場合より、d ^ 2には ^3 F + ^3 Pという項が含まれていることがわかる。
(左上付きの数字はスピン多重度 2S + 1の値(全スピン量子数の取りうる値の数)で、3の場合は三重項と呼ぶ)

また3つ目の##  d _ \alpha ^ 1 ,  d _ \beta ^ 1の場合より、 d ^ 2には ^1 S + ^1 P + ^1 D + ^1 F + ^1 Gという項が含まれていることがわかる。
この内、 ^1 F, ^1 Pは三重項と重なるため、取り除く。

以上より、 d ^ 2の場合のスペクトル項は ^1 S + ^3 P + ^1 D + ^3 F + ^1 Gとなる。

まとめ